「ライトを点けましょうか」
「いや、いい」
首を振った深瀬に笹井は部屋の中央を指して説明する。
「ちょうどこの場所で、秋吉春樹くんは倒れていたそうです」
「椅子が倒れているのは?」
「犯人と争ったんじゃないでしょうか。彼は藤中学校の三年生で、昔から勉強熱心で将来は医師になると言っていたそうです。父親と共にアウトドアによく出かけていたとか。しかしここ最近は不登校だと聞いています」
「誰がどう見ても引きこもりの部屋だ」
深瀬の言葉に笹井が頷き、部屋の中央部分のベッド横に立った。
「ここで、ゲームなどに使用するこの配線を使い、首を絞められ倒れていたとのことです。相当強く絞められたようで、凶器となったコードはちぎれかけていますね」
笹井は配線コードを指差しながら状況を説明した。
「間違いなくこれを使ったのか?」
「はい、首に残る跡とも形状が一致しているとのことです」
「では、犯人もこのコードを持ったということだな。解析を急げ。唾液でも皮膚片でも何でも、痕跡を見つけるんだ」
【前回の記事を読む】浴槽に溜められていたのはお湯…犯人は医学の知識がある人間なのか?
次回更新は10月8日(火)、21時の予定です。