また、これから外資系で働こうと考えている人は、この本のなかに書かれていることを、自分の職業選択における判断材料の一つにすることもできるはずです。大学でコミュニケーションを学んでいる学生には、勉強の合間のちょっとした読み物になります。
さらに、ビジネスに限らず一般の日本人にとっても、日本人の間や日本人社会のなかだけで通用する考え方や見方、慣習や行動に気づくことで、最近非常に増加している外国人旅行者や外国人労働者などとのコミュニケーションや、相互理解の促進のための参考にもなるでしょう。
コミュニケーションと言語
外資系について考えるときに重要なことの一つは、言語すなわちコミュニケーションの手段です。多くの場合英語がコミュニケーションの手段になりますが、英語ができればコミュニケーションができると思っていたらそれは間違いです。
英語は必要であってもそれだけでは十分ではありません。日本語で考えてそれを英語に訳して喋ったら、相手はある程度は理解できるでしょうが、場合によっては誤って理解してしまうかもしれません。
言語はその国や地域の文化や歴史を反映しています。日本語の英訳は英訳であって英語ではない、つまり日本語の単語や文章を英語の単語や文章に置きかえるだけで、中身、すなわち意味やニュアンスが必ずしも全く同じではないことに注意が必要です。
例えば、夏目漱石の『我輩は猫である』も一般的な日本語の「私は猫です」や「俺は猫だ」なども、英訳するとすべてI am a cat.で、小説の題名としての固有名詞ならばI am a Cat.でcatが大文字になるくらいです。
このように、これらの日本語の微妙なニュアンスの違いは英語ではまず表現不可能です。同じように、おそらく英語の表現にも微妙なニュアンスの違いがあり、それらの違いを日本語で表すことができない場合もあることでしょう。
【前回の記事を読む】ひと括りに解釈できない外資系。海外へ進出している日本の会社もまた、現地の人たちから見ると外資系。