アイアムハウス

笹井が書斎の机の上にある睡眠薬の入った瓶を指差した。深瀬はそのラベルを見つめて、書かれている薬品名を読み上げる。それから、笹井の方へ振り返った。

「秋吉航季が途中で目覚め、悶え苦しんだのならば、ボールペンは握っていられないはずだ。おそらく眠ったまま死亡したのだろう」

「あ、そうか……!」

「犯人がゴルフボールをどうやって胃まで押し込んだか、考えたか」

「はい、それがどうやら、これを使ったようです」

笹井は、足下に転がっていたステンレスの棒を指差した。その先にはしっかりと血が付着している。

「それは?」

「外干しに使用する物干し竿のようなものですね。形状と血痕の箇所が一致していました。少し土がついているので、外から持ち込んだものと思われます。この家の庭に置いてあったものを咄嗟に持ってきたと考えるのが妥当かと」

「製品名と入手経路を調べておけ。……果たして計画的犯行か、突発的な犯行か、まだ見えないな」

「どうしてですか? 犯人は睡眠薬を用意しているんですよ。計画性はあるじゃないですか」

「睡眠薬を飲ませると決めているならば、あとは首を絞めたり、出血させるだけで良い。なのに、現場にあるものを使ってゴルフボールを詰める必要があるか?」

「それは、そうです……。睡眠薬は事前入手が必要。でも、殺害方法には突発性が見られる。まして睡眠薬の瓶を残していくなんて、警察を馬鹿にしてます。世間に知らしめたいとすると、怨恨でしょうか? 秋吉家への? あるいは警察への?」

「調査を続けよう」

そう言った深瀬に頷いて、笹井はもう一度秋吉航季の遺体に目を向けた。