そんなあさみとは反対に、理緒子は極端に何かに熱中したかと思うと、すぐに冷めてそれを放り出した。人よりずっと早く飽きてしまう。
同じことを繰り返すことはあっても、継続してやることは彼女にとって耐え難い苦痛のようだった。根気がないというより、突然本質がわかってしまって、物事から価値が消えてなくなる、という感じだった。
あるとき理緒子とほかの何人かがふざけて、あさみを教室の前後のドアから締め出したことがあった。
あさみは入ろうとしてドアを引っ張ったが、びくともしない。曇りガラスの影から事情を察し、すぐさま隣のクラスの教室に入って、そこから教室同士をつなぐ長いベランダへ一旦抜け、外から教室に入って来るや、すばやく自分の席に着いた。
そして、いたずら者達がまだドアを押さえているのを、いつこちらに気がつくだろうかと、ニヤニヤ座って見ていた。
理緒子も皆と一緒に横からドアを押さえていたのだが、急に力を抜いておもむろにあごを上げ、ベランダのほうへ視線を漂わせた。自分が命じて始めた遊びだったのに、わずか十秒かそこらで飽きてしまったのだ。
いつもの角度にあごを上げて明るい外を眺めている。もはやドアもいたずらも頭にない。そのため、あさみと視線がぶつかったときに、なぜ自分を見て笑っているのか、何秒か考えなければわからなかった。やりかけていた遊びを思い出すと、
「あああーっ!」と、叫んだ。
「どうやって入ってきたの!」
冬休み中で、しかも松の内の土曜だったため、職員室にはわずかな先生しかいなかった。