この人は何か魂胆があるのだろうか?
実家が大企業のお嬢様を味方につけて、アパレル業界で働きたいとか?
そんなバカな。ここは何度も言いますけど、医療系大学だ。
「えっと……」
あずみは言いよどんだ。それでも、次の質問だけはしておかなくてはと思った。
「あの、真琴に何か……個人的な用事でもあるんですか?」
あずみは一応、真琴の友人である。真琴に不利益になりそうな、もしくは、不愉快になりそうな用件なら、友人として紹介なんてしてはいけないだろう。
そもそも用事があるなら、自分で会いに行ったらいいじゃないか。
……とは言えなかったが。
「個人的ねぇ……」
先輩女子は、またしてもにやりと笑い、どう答えようか考えているようだ。
「その櫻井真琴本人に個人的に興味がある。もしくはお友達になりたい……というのでは、あんたは納得しないだろう?」
と、あずみを見透かしたように言う。一瞬バカにされたかと思った……。
「もちろん、そんな中学生レベルの話じゃない。お友達になりたいなんて、まさか、そんな友好的なことを言うつもりもない」
先輩女子の言葉に、あずみも少し警戒心を抱く。
「でもだからといって、なにも決闘を申し込むわけでもないから安心しな」
先輩女子は正面からあずみを見返してきた。目は笑っていない。いたって真面目に言っている。……それだけは分かった。
「それなら、友好的でも決闘でもないなら、一体どんなご用件なのでしょうか?」
あずみは緊張しながらも、食い下がることをやめなかった。先輩女子はおやっと思ったらしい。案外この子は手強いぞと思ったのか、
「そうだな……強いて言えば、事情聴取、かな?」
そう答えてきた。
「じ、事情聴取……ですか?」
あずみは驚いた。一瞬、刑事である義兄を思い出した。