はじめに

なおここでの論述の中には先人がすでに気づき発表されている内容も多くあると思う。ただこの著述の中に一片のオリジナリティーを感じる部分があれば、さらに専門的に探究していただきたい。

古代の散歩道を辿り歴史を眺める案内書として、以下の四書の文庫本を参考にした。

『古事記』、『日本書紀(㈠~㈤)』、『魏志倭人伝・後漢書倭伝・宋書倭国伝・隋書倭国伝』、『旧唐書倭国日本伝・宋史日本伝・元史日本伝』の四書八冊で、岩波書店の文庫本である。

文庫版を参考にした理由の一つは、携行が容易であったからである。

また日本古典文学大系の『古事記・祝詞』と『日本書紀』も見たが、注釈や解説に歴史の流れとは無縁の専門的な情報が多すぎた。確証のない説の引用が散見され、文庫版の注釈や解説で十分役に立った。

なお『古事記』に記された天皇の記事を引用する場合、「○〇天皇記」とし、『日本書紀』の引用の際は「○〇天皇紀」と書いた。

小高い散歩道から歴史の大きな流れを俯瞰しながら、疑問や違和感のない日本の古代像をイメージしたいと思う。

第一話 古代の史書と読み解き方

歴史の大きな流れを振り返る時、必要なものは古代の史書である。古代日本を記述する史書には、中国から見たものと日本独自に編纂したものがある。歴史の大河を遊覧する時、両者が羅針盤としてどのような方向を教えてくれるのかを考えたい。