「皆さん、有難うございます。今ほど会長からお話がありましたように、再建を決意いたしました。実は再建には少なくとも二、三年は掛かると思われますが、それまでウチにいる二十五名の従業員をどうするか、再開した時にちゃんと戻ってきてくれるかという大きな問題があって、正直とても悩んでます」

「今はみんな働きようがなくて従業員さんたちも収入がないし、このままでは生活できないものね」と、由里が言い添える。

「よそに出したら、もう無理ねぇ。戻れないだろうなー」

メンバーたちは皆下を向いたり、天上を見つめたり、外の景色を眺めたりしながら、いい案を捻り出そうとしている。

五分ほどの沈黙の後、靖子が手を上げた。

「それなら、再開まであわら温泉のそれぞれの旅館で手分けして、一人でも二人でも、お預かりしたらどうでしょう?」

この閃きに出合ったメンバーたちは、未知のドアを開けた探検者たちのように表情が一気に好転した。

「その案に賛成。炭屋は三人お預かりします。そして、再開の時には必ずお返しします」

「亀屋も、二、三人お預かりします!」

同様に、美松、みのや、白梅荘、賀茂川、松風荘もそれぞれ何人かを引き受けることを申し出て、会長の由里も緑泉荘で幾人か預かることを約束した。

「茜屋の方々も、ここでならお互い近くで励まし合えるしね」