今度は、長谷川が久紀に尋ねた。

「久紀さんは長男として、茜屋を継承する意志はありますか?」

「はい。僕は自分の将来を賭けて全身全霊で、茜屋を継ぎます!」

久紀の手は震えているが、林も長谷川も、沖村父子が迷いなくあまりにキッパリと答えきったことに胸を打たれていた。

「火災の直後に、私と女将はすぐに再建の覚悟を決めて、それを元に家族で話し合い、長男の久紀は七代目として茜屋の後継者となることを約束してくれました。そして再建するまで家族全員で一緒に頑張ろうと誓い合いました」

林は、一息ついてから、

「こんなに早く……。解りました。福井銀行は再建のお手伝いを前向きに検討させていただきます。その代わり、お手伝いするとなれば、当行は口も身体も出しますよ。つまり、沖村社長と一心同体で、ともに汗をかいてまいります」

「有難うございます。力強いご支援に応えられるように、家族、スタッフ一丸となって頑張ります!」

深く頷いた林が、

「沖村社長、当行としてはこの長谷川支店長を茜屋さんに出向させたつもりで茜屋の一員として、いや沖村社長の分身として茜屋再建のために全力投球をさせます」と声を張り上げた。