「俺が塾長として個人の立場で借主になるわのう。それで、この湯けむり創生塾を作ってくれた野中先生に、俺が腹割って連帯保証人を頼んでみるわ!」

みのや旅館の美濃屋も言った。

「前田塾長にだけ行かせる訳にはいかんわ。俺も先生からメンバー集めを託された責任者や。一緒に頼みに行くざ!」

メンバーたちは賛同して、二人に命運を託した。

三日後、前田と美濃屋は、あわら市新富にある野中克弘県議会議員事務所を訪れた。初めに少し世間話で談笑し、タイミングを見て前田がついに切り出した。

「野中先生に『湯けむり創生塾』を作ってもらい、県から補助金も受けられるお陰で、『湯の町公園』の全体の計画は現在着々と進んでますが、『屋台村』については後一千万円資金が足りません。しかし、我々メンバー一人一人にはそこまでの資金力はありませんし、保証能力もありませんから、そこで大変困っております」

「あわら市としては旅館の跡地を買収する予算で精一杯で、もうこれ以上は出せないやろうしな……」

前田が東尋坊から飛び降りたつもりで思い切って言う。

「先生! 残り一千万円を福井信用金庫から借りようと思うんで、何とか保証人になってもらえませんか?」

「えっ! それは、連帯保証人ということか……?」

「はい、そうです」

「父親の遺言でそれだけは絶対なるなと言われているんやけどな……うーん」と野中は腕組みをして考え込んだ。

前田が深く頭を下げる。

「何とか、野中先生! お願いします。もう先生より他に頼る人はいないんです」

美濃屋も一緒に頭を下げる。

「先生。どうか一つ、あわら温泉のために、ひと肌脱いでください」