あわら温泉物語
その後、屋台村の工事は担当者の藤田忠らの奮闘により一歩一歩進んでいった。平成十九年十二月六日、「あわら温泉屋台村 湯けむり横丁」はついにプレオープンの日を迎えた。
おでん、ラーメン、串揚げ、手打ち蕎麦、越前海の幸、立ち飲みバーの六店舗が先行開店し、市長や市議を迎えてオープニングイベントを催した。
温か味のある提灯が懐かしい旅情を誘う中、温泉客は浴衣に下駄履きで気楽に暖簾をくぐる。
各店わずか十席ほどの座席が見知らぬ客同士の距離を縮め、店主を含めてすぐに仲良くなれる『かまくら』のようなノスタルジックな空間は一躍人気となった。多くの人々が訪れ、連日連夜大いに賑わった。
翌年五月二十六日。パスタ、焼き鳥、カレー、家庭料理の四店舗を追加してグランドオープン。そして、創生塾メンバーで運営していた立ち飲みバーに代わって、地元のホルモン屋が加わった。
この日のために苦労を重ねてきた「湯けむり創生塾」メンバーの目にはキラリと光るものがあった。屋台村は、青年たちが自らのアイディアと行動力で、あわら温泉に新しい魅力を作り出した実証ともなり、地元の若者たちに自信と勇気を与えたのだった。
「屋台村 湯けむり横丁」は、その後も順調に成長し続けた。
そんな成長の中で、屋台村で成功した店は県内各地に独立出店していった。すると、それを見た意欲ある挑戦者たちが、また次々に魅力的な出店をするという好循環が生まれたのだ。