「神崎製紙は米国では禁止されている日本の定年制を米国にもちこんだ。これは、年齢にかかわらず、等しくサービスの価値をもとに従業員を評価しようとの米国の基本的な価値に対する挑戦であり、米国カンザキは反社会的な企業である」というストーリーが描かれてしまったのです。
米国カンザキは敗訴しただけでなく、懲罰的損害賠償まで課せられる結果となりました。証拠開示手続きに対する無知と、油断が取り返しのつかない結果を引き起こしてしまったのです。
裁判はブラウンリーさんの勝利でした。
陪審員は、米国カンザキに対しブラウンリーさんに26万2252ドル(3409万円)の補償的損害賠償と5万ドル(650万円)の精神的苦痛のための損害賠償を支払うよう評決しましたが、裁判長は同社にその倍額の62万4504ドル(8118万円)と、さらに弁護士費用15万7492.50ドル(2047万円)、その他諸費用1万404.35ドル(135万円)の支払いを命じました。
裁判長の怒りが手に取るように見えてきます。
陪審員が決定した額では十分な抑止効果が得られない、海外の企業(日系企業)に対する厳しいメッセージを送る必要があると裁判長は考えたのでしょう。先に述べたマクドナルドの判決に通ずるところがあります。
日本の会社では、従業員は「定年制」により退職することが一般的です。
しかし米国では、定年制は年齢に基づく差別として違法になります。日本では全く問題にならないことであっても、米国では〝違法な差別〟となるのです。
【前回の記事を読む】米国では年齢による差別は禁止、定年制は違法。法律や慣行の違いで招いた「米国カンザキ年齢差別訴訟」