本当は、もう治療の方法が無い患者は、ホスピスとかに行かなくてはいけないのだが、彼が病気になりまだ元気な頃に、「もし治療法が無く、もう助からないと言われても、息子がいるこの病院で死にたい」と言われた事があった。

それを担当医の先生に伝えたところ、「僕の一存では決められないし、上の先生に聞いてみないと分からないです」と言われた。でも「聞いてみてください」と伝えた。それから何も言って来ないので、「どうしたのかな」とは思っていた。

この大学病院にいれば、息子も診てくれるし、動けない彼も、週に二回位はリフトでお風呂にも入れてくれる。又スタッフの方達も親切で、とても感謝していた。とはいえ助けようにない患者は、ホスピスとかに転院しなくてはならない。いつそう言われるとも限らない。

そこで終末期までいられる近くの病院も見に行った。ホスピスのある病院は、すべて遠い。意外とないものなのだと、改めて感じたものだ。しかも家から遠いと、私自身が通うのに大変になる。何とか近くでないものかと、大学病院のコーディネイターの方に、紹介して頂いた病院を見に行った。

そこは暗くて古い。大部屋には八人位の方達がいて認知症の方ばかりだろうか、ぼっとした症状で起きている人もいれば、寝ている人もいる。ぎっしりとベッドが詰められていて、終末期の人もいそうである。お金は無いが、もう少し最後を自分らしく過ごせる様な病院はないものかと思った。

家から遠い所しかなく、意外と無い。これだけ癌とか腫瘍で亡くなる人も多いのに、「何故もっと良いホスピスとかがないのか」、又安心して終末期まで預けられる綺麗なホスピスの病院がもっとあってもいいのではないかと思った。

結局彼の場合は、何とか大学病院にいられる事になり助かったのだが、大学病院という所は助かる命を救いたい所であって、もう助けようがない人は他に転院しないといけない。本当なら彼も他の病院に転院しないといけない人であり、もう助けようがない人なのである。息子、担当医の先生、病院に感謝しながら、終末期まで何とかいる事ができたのは、彼もきっと「ありがとう」と感謝していた事だろう。

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