あなたがいたから

再再発

あと二、三か月しか生きられないのか、その様な気持ちで過ごす日々は、本当に辛さしか無かった。最後にただ聞きに行くだけなのに、セカンドオピニオンもお金がかかった。私学の大学病院でもかかり、国立の病院ではその倍もかかった。

この時「国立なのに、何故こんなにかかるのだろうか」そう思ったのだ。どの先生にお会いするかで違うのだろうか。その辺りは私も分からない。

担当医の先生からは、「もう家で看るのは大変なので、入院した方が良いですよ」と告げられた。

しかし入院してしまえば、彼はもうこの家に帰って来る事はできないだろうし、もう少し家で看てあげたかったのだ。又お墓参りと彼のお母さんの所に、最後に連れて行ってあげようと、息子と相談した。

四月初めに動けない彼をやっとの思いで車に乗せ、お墓参りと、グループホームにいる彼のお母さんの所へ連れて行ったのだ。

するとアルツハイマー病を患っている母と、隣り合わせに座り、にこにこと二人で笑っているではないか。病気になってからの彼は、にこにこと笑う事も忘れていたのに、親の前では、最後の精一杯の親孝行だったのに違いない。

この時は「連れて行って良かった」と思ったものだ。最後ではあったが、あの時の二人の笑顔は今でも忘れられない。親子は何か通じ合えるものがあるのだろうかと思った。