四月に入ってから入院するまでは、もう彼は動けずおむつをする毎日になってしまった。しかしおむつをしても自身でトイレに何とか行こうとして、バタンバタンとすごい音をたてて、倒れる毎日が続いたのだ。

「トイレに行きたい時は伝えて」と言っても、もうこの頃の彼には、この言葉は伝わらなかったのだ。部屋中布団を敷き詰め、転んでも壁とか柱に当たらない様にした。

又おむつをしていても、布団からシーツからすべて濡らしてしまう毎日が続いて大変だった。それでもなるべく彼を、家で看てあげようとして頑張っていた。でもいつかは限界が来るものだ。担当医の先生と約束した日が迫っていた。

入院する前に、家には友達夫婦がお見舞いに来てくれた。友達のご主人も、「今度お酒を飲もう」と言っていたのに、残念がっていた。「もうこの約束も果たせないし、夢に終わってしまったよ」とポツンと言った。

又入院する前日には子供達、孫五人を呼び、皆で写真を撮った。この時の写真は未だにスマホの中にある。写真にしてしまうと、何か寂しくなってしまう様に感じたからだ。

まだ小さい孫達は、病院に行く事は分かっていても、病院に行き、治って帰って来るのだろうと、そう思っていたと思う。