第一章 昭和時代、平成時代の思い出

中学生の頃になると電車で中目黒から渋谷に出かけることもありました。ショッピングや映画を見に行く時、塾通いも渋谷まで出ていました。友達と駅で待ち合わせをして約束の時間に相手が来なければ駅の改札前の伝言板に「先に行っているね」のメッセージを書き残して先に目的地へ向かいました。

今のようにいつでも誰とでも連絡が取れないことが当たり前で、その分他者からの束縛も少なかったようにも思います。

今でこそおしゃれで、デートスポットで週末を中心に買い物客などが多く乗降する東急東横線代官山駅はホームの長さの都合上、トンネル内に一部車両が停車するために、その一部車両からは乗り降りできない不便な駅の時代がありました。すごく不便も感じましたが鉄道大好きな私としてはその不便な事実よりも一部車両がトンネルの中から出られずに駅に到着するその滑稽な姿がとてもワクワクする光景でした。

今の代官山駅を知る人には想像できないほどの不便な駅でした。もちろん駅前にも何もありませんでした。昭和50年代、両親と買い物で利用をしていたのは、自宅から一番近い恵比寿駅前商店街。今のように専門店を多数連ねて経営するモールやアウトレットなどない時代でした。

当時は恵比寿駅前商店街にはおもちゃ屋さん、ケーキ屋さん、薬屋さんもありました。昔はドラッグストアが存在していなかったので、薬は薬局で、生活用品はスーパーマーケットで購入することが通常で、まとめてどこか1カ所で購入するということはない時代でした。

カメラ屋さんにはカメラのネガとなるフイルムの現像を出しによく行きました。当時はフイルムカメラの時代で、私の幼稚園時代に父母会でアルバム係になったことをきっかけに、子どもたちの写真を撮り、卒業アルバムを作る担当になった母は写真撮影に開眼してしまい、現像を出しにこのカメラ屋さんをよく利用していました。

今でこそデジタルカメラが主流で一眼レフも素人が簡単に操作できる時代。デジタルを駆使して少しのカメラセンスさえ身に付ければ写真学校へ通わなくても魅力的な写真を撮影できる人はたくさんいます。

近年ではカメラ屋さんと言っても子供の百日祝い、七五三の個人の記念写真を撮影する写真スタジオ併設のカメラ屋さんが主流になりましたが、最近アナログ写真を見返したのですが、色も褪せてしまい、状態としては良いとは決して言えないけれどそこに感じる懐かしさ、味わい、香りもがその写真から漂ってくるように感じ、なんとも言えないノスタルジーが味わえるアナログ写真がもう一度注目されているという話も聞きます。誰しもが経験してきた心に残る思い出アルバムは、生涯消えることなく残ることでしょう。