「何も変わらないでしょう。首相は日本酒好きだ。酒を飲むと鼻の粘膜が腫れ、鼻で呼吸ができず、口呼吸になり頭痛もひどかったはずです。それから、鼻が悪くなると耳が塞がったように感じ、聞こえなくなります。
手術が上手くいき、鼻詰まりがとれれば、人の話がよく聞こえるようになり、頭痛がなくなれば原発の再稼動のことや、日本の安全保障の問題点である敵基地の攻撃についても見直すかもしれません。異次元の少子化対策についてももう少しましな考えが出るかもしれません。全部、希望的観測ですが」
「鼻の手術が日本を救うという訳にはいかないのですね」狸はがっかりした様子だった。「少子化対策も結婚しやすくすることから考える必要があるように思います。それはそうとして、お子さん達は元気ですか」
「有り難うございます。子供達はそれぞれに独立し、出ていきました。狸は寿命が短いので巣立ちも早いのです。後は、夜、交通事故に遭わないように願っています。
この辺の街の中心街は狸の生息数が少なく交通事故死する狸は少ないのですが、山の近くになると交通事故に遭う狸の数も増えます。動物愛護の点から狸に注意するようにドライバーに呼び掛けてもらいたいものです」
「患者さんの中に、農家の方がいらっしゃるので聞いてみましたが、農作物を食べに来る狸はみんな1匹で、丸々とよく太っていると言っていました。お子さん達の食べ物の心配はないようですね」
「八王子は年間を通して農作物があります。農家の方には悪いと思っていますが、ここら辺一帯は原野で、元々は狸の住みかだったところです。人間の作った農作物の一部は狸が食べても土地代の一部と思っています。
それよりも、話題になっている樹木900本の伐採に反対している人達が知事が狸に扮して木の伐採をしている絵を掲げているそうですが、いくら知事が狸に似ていてもこれはやめて欲しいですね。狸は木を切ったりしません。自然環境の破壊は人間がやっているのです。我々にとっては良い迷惑です」
もっともな意見だ。樹木1本1本にも神が宿っている。なぜ切るのか。
タクシーは病院に着いた。
【前回の記事を読む】眠りから覚めると、タクシーの運転手が狸に… 人間社会へ溶け込む狸の最近の生活とは?