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鍛冶内が長山町を離れた翌日、千景が会津若松市にある会津東病院に入院した旨のショートメールが、乙音から鍛冶内の携帯に届いた。鍛冶内は内心、心穏やかではなかったものの、焦っても仕方ないと、なかば諦めの気持ちで、再び長山町を訪れることができる時期が来るのを待つことにした。その後、東京での仕事に追われながらも、鍛冶内は依然として、千景に依頼された乙音と汐里とのことで頭が一杯だった。

おそらく千景も病室のベッドの上で、同じような中身を、頭の中で行ったり来たりさせているに違いない。答えの出ない難問の大きさゆえ、それが解けずに苦悩する悩みの深さは千景も鍛冶内も同じはずだった。しかるべき時が来れば、テスト後に返されてくる答案用紙のように、正しい答え合わせを誰かがもたらしてくれるのだろうか。

だがそれを自分がやらない限り、おそらくは永遠に解答はわからず仕舞いなのだと自分を鼓舞しながら、鍛冶内は来る日も来る日も頭の中で解けぬ問題をあれこれと考えていた。

「乙音に聞いて、真相を教えてくれれば一発なのだが…………」

でもそれをすれば、千景の願いに添えないことは明白だった。真相に辿り着きたいという願望は、鍛冶内の中でますますその比率を増していたが、千景の意図に添わない形で、鍛冶内の単なるエゴのために辿り着くべき到達点ではない。千景が望んでいるのは、乙音に知られることなく、病床で横になっている自分の耳元に、そっと真実をもたらしてもらうことなのだ。

仮にそれが千景の心に思いもよらない衝撃を与える結果であったとしても、彼がそれを望んでいる以上、自分にはそれに応えてやらねばならない義務がある。

今や鍛冶内の中にも、真実を知りたいという強い願いは千景に負けないほど膨らんでいるものの、それが叶う瞬間はもちろん、自分が千景との約束を果たした際の単なる役得と呼ばれるレベルのものでなければならない。

約束を交わした時に千景が見せた、少しだけ安堵した表情を思い出しながら、鍛冶内は真実に辿り着かねばという強い決意を心に上書きするのだった。

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