暫くすると、カンカンカンと鉦が連打されて、漸(ようや)く子供たちの念仏は終わる。

そのあと一列に並んで坊さんの前に立つと、坊さんは何かブツブツと念仏を唱えながら一人一人、大きな数珠の端に付いている大きな房で、ぐるぐると頭を撫でてくれる。これで子供たちはこの一年、無病息災で暮らせるのだ。

このあと世話役のおじさんからおさがりのお菓子をもらって、子供たちの地蔵盆は終わる。

坊さんが帰って行って、世話役のおじさんたちの片付けが始まると、辺りで遊んでいた子供たちも手伝いをする。

おじさんがお供えを何種類かお盆に取り合わせて、「これは〇〇さんのとこへ」と言うと、お盆を受け取った子は言われた家までおさがりを届ける。届いたお家では、「ごくろうさん」と一銭か二銭をちり紙にくるんで、お使いの子にお駄賃を持たせる。

空のお盆を持って戻ると、おじさんも「よっしゃ」と言って、お菓子かぶどうの一房を掌(てのひら)にのせてくれた。子供の数が少ない時はお駄賃やおやつを目あてに、二度も三度もおさがりを配る手伝いをした。子供にとって地蔵盆は本当に「よい日」なのであった。

おじさんたちがせっせと働いて片付けがすっかり終わると、露路はまた元の静けさに戻った。子供らの楽しい余韻を引きずって、やがて長い夏の日も暮れてゆくのである。