高垣は王子様にどのように挨拶していいか戸惑っていると王子の方から握手を求めてくれたのでホッとしながら握手をし、王女が軽く手を伸ばしてきたので不安になり王子の顔を見ると軽く頷いたのを見て、王女の指先を少し触って下がりながら頭を下げた。

一行の挨拶が済むと高垣が先導するような形でカラムを先頭に王子・王女と続きエレヴェーターに乗って最上階の応接室へご案内した。

応接室には沢山の花が飾られ、椅子には全て新しい白いカバーが掛かっていた。綺麗な金の刺繍を施された大きいテーブルクロスが掛かった上には、ナツメヤシの果実デーツが入ったクリスタルの器が幾つか置かれキラキラと光っている。

王子と王女の他にはカラム副大臣、部下の二人と三人のボディガードが来て、英国四井物産側は、高垣に加え西田、アラビア語が堪能な中東担当部長が同席した。王子・王女が座ると皆は着席し、直ぐにミントが入ったアラビアティーが高垣の秘書を含めた女性陣によって運ばれて来た。

王子、王女は着席する前から浮かない顔をしながら高垣を見ていた。高垣が、わざわざお見え頂いたお礼を言って心より歓迎致しますと述べた。

カラムが、お忙しいのに突然無理にお時間を頂き有難うございますと挨拶すると、直ぐ王子が「ショウさんのお顔が見えないようですがやはり遅れていますか?」と尋ねた。

高垣は「翔へ連絡をして間に合うように帰社を指示したのですが、残念ながら飛行機の切符が入手出来ず明日の昼に帰社する事になりました」と応え、高垣と他二人は立ち上がって「誠に申し訳ありません」と言って頭を下げた。

王子は「大変残念です」と応えて本当に残念そうな顔をした。横に居た王女はがっかりして泣きそうな顔を隠す事無く目を伏せていた。

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