愛しき女性たちへ

秀司はどちらかと言えば女尊男卑主義者なのかもしれない。中世以前ならともかく、現代社会においては政治は女性が司った方がいいとさえ思っている。

オトコの脳は戦争とセックスのことしか考えられないのだ。

暴力的な犯罪はその殆どがオトコによるものだ。原始時代の名残が現代社会に通用する方がおかしいのだ。イスラム国などのデタラメを見れば明白だ。

だが奈保子はこう言うのだった。

「私はオンナに政治を任せる気にはならないな。だって、オンナは気分屋だもの」

「旦那は気分で奈保子ちゃんへの態度が変わったりしない? 仕事で上手く行かないことがあったときとか。第一旦那は奈保子ちゃんが自分より活躍する、というか活躍していると思い込んで妬んでいるんでしょ? 

オトコだって妙なプライドに固執したり嫉妬したり、その時々で機嫌が変わる心のちっちゃな生き物で、組織の中では足を引っ張ったり同僚が失敗すると心の中でほくそ笑んだりしているんだよ。表面に表さない術を身に付けているだけでね。逆に同僚が出世すると面白くなくて機嫌が悪くなりやけ酒飲んだり」

「わかる! ママ友の話を聞いても浮き沈みの激しい旦那っていますもんね」

「そのくせ女性への執着は強くて、別れると気持ちの切り替えが出来ずにDVや復縁を迫って殺しちゃったりする。陰湿な心に囚われているじゃない。アンガーマネジメントが出来ない稚拙なオトコが案外多そうだよね。第一戦争を起こすのはいつもオトコだし」

「そうですね。私はどこかで、男社会に甘えている方が難しいことを考えずに済むから楽だと思っているだけなのかもね。私は建築の仕事が好きで、そんな私でいたいから、私が私であるために面倒くさいことは避けてるのかも」