「離婚とか考えたこと無いの?」
「しょっちゅうですよ。でも日本での結婚ってヒトとヒトの結び付きじゃないでしょ? いまだに○○家と△△家の結婚披露宴とか。この度は大変素敵なご縁で○○家と△△家におかれては……。だから離婚ってものすごく大変なんですよ。ママ友で離婚した人の修羅場の話も聞くし、学生時代の友人で離婚したかったけれど周囲の、つまり家の大反対で超面倒くさくなって諦めた話とか聞きますもん」
それが日本の現実で、ある意味社会の秩序が一定程度に保たれている理由なのかも知れない。
それでも日本の離婚率は三十五%を超えており、三組に一組が離婚している計算だ。二十五歳未満の離婚者数が過半数を占めているという統計もあるのだが、一九七○年代は九%くらいだったらしいので急速に増えているということだ。
親や親戚の数も減ってきた熟年離婚ならともかく、若い夫婦の離婚は確かに大変なことなのだろう。子供がまだ小さければ親権や養育費のこともよくよく考えなければならない。
このような現状に日本では各種法令や税制はもちろん、家制度とかオトコたちの心が追い付いていないということなのだと秀司は考える。
我慢する必要はどこにも無いと思う。
これから何十年と生きる人生を悔い無く有意義に過ごすために、結婚していることが足枷になるようであれば離婚も一つのステップと捉えて、お互いの努力による改善が限界だと感じるのならば躊躇せず踏み切ってもいいと思う。
だが奈保子は、
「私はそんな面倒くさいことは嫌だな。今さらという気持ちもあるし好きな仕事は出来てるし、好きなお酒も飲めるし。でも娘にはもっと自由に生きてほしいと思っているんですけどね」