第3章 貸し渋り

手形割引拒否

会社に着くと、竹之下は松葉のあとを追って、社長室まで来た。

「社長、先ほどおっしゃった条件とはどんなことですか。奴らは、自己保身しか考えてない連中ですからね。自分に都合の良いことしか言ってこないでしょうね」

「条件? 担保を増やしてくれ、と言ってくるよ」

松葉は、確信を持っているかのように言った。

「担保ですか。割引は貸付だ、と聞きましたが、割引は手形を担保に取って融資しているに等しいことでしょう。それを貸付だからといって担保を増やせとは納得できませんね。もう会社に担保なんかない、外村の調査で分かっているくせに。

けしからん、そんなことって、人の足元を見た汚いやり方ですね。全く背広を着たヤクザのやり方ですね。社長、そのときはどうします?」

「うん、ないものはない、できないことはできないと言うしかないよ。しかし、それは連中には織り込み済みだよ」

松葉の言葉に、竹之下はただならぬものを感じたようだ。

「とおっしゃいますと、まだ連中は何かを企んでいる、ということですか」

「そうだ」

「まさか、社長の生命保険を狙っているようなことは、ないでしょうね」

「それもありかもしれない」

「そうですか! まるで鬼そのものですね。許せない。あとで専務とも話してみます」