両親の結婚

そんな父も母親譲りの激しい気性の持ち主だった。しかも、母親の溺愛と父親の七光りでわがままに育っているから、祖母よりさらにバージョンアップされていたのではないかと思う。

ものすごく神経質で短気で激昂しやすい上に自己中心的という、かなりキツい性格だった。私が思うに、男であるだけに、祖母より父の方が恐ろしかったのではないだろうか。

これも母から聞いたエピソードである。祖母がとある布地を母に見せて、これで自分の服を縫ってほしいと頼んだことがあったらしい。母は洋裁学校に通っていた経験から、洋裁ができたので、私たち子どもや自分の服をよく手作りしていた。しかし、この時、祖母が母に見せた布地はとても上等なものだった。

母は自分には扱えないものだと思い、縫えないと言ったところ、次の瞬間、父から平手で思い切り頬を叩かれたという。そして、「このまま、母が死んだら、おまえ、一生恨んでやる!」と怒鳴ったというのだ。

この話は、私が大人(たぶん二十代)になってから、父と母と三人でお茶を飲んでいた時に、母から聞かされた。父を目の前にして、未だにどうしても忘れられないことがあると言って、母は話し出したが、この時、父は「そんなことまだ覚えてるなんて……」と言って、否定しなかったので事実だろう。

晩年は、父も母には少し頭が上がらなくなっていたようだが、若い頃はすさまじかった。祖父と同じく、外づらは悪くなかったが、家庭内、特に自分の支配下にある妻や子どもに対しては容赦なかった。カッとなると怒りを抑えられないのか、すぐに頬っぺたに平手が飛んできた。