ある日、義姉から、
「チーちゃん、顔色も良くないし、元気ないみたいだけど、もしかして病気?」と聞かれ、千恵は義姉に病気のことを打ち明けたと聞いた。
義姉と会う機会があり、
「チーちゃん、昔から見栄っ張りで、自分が病気のことは話さないんだよね」
「私に何かできることがあれば、言ってくださいね」と言ってくれた。
娘のママ友で、中学受験や学校行事、飲み会・ランチ会など何度も一緒に行き、とても仲が良かった人にも話をしなかった。自分ががんであることを知られたくなかったのだろう。
病気になってから、人と会うのを避けるようにもなった。自分ががんだと分かったら、離れていってしまうのを気にしていたようだ。
毎年、お正月に千恵の実家で各家族が集まり、新年の顔合わせが行われていた。我が家は、千恵の体調不良を理由に欠席した。新年早々、病気の話はしたくなかったことや同情されることを千恵自身が一番嫌っていたためだ。
私の仲の良かったゴルフ仲間ががんを患った時、ゴルフに誘うのをやめた。月に一回の飲み会も無くなった。がんになるとは、どんな仲の良い人や親族でさえも、遠ざけてしまう魔力を持っているように感じる。
【前回の記事を読む】「権力や地位があれば、早めに妻の手術をしてあげられたかもしれないのに…」自分の無力さを感じた
次回更新は8月17日(土)、16時の予定です。