冬の訪れと卒業式
紹介された都内の病院に通うようになり、検査の日が続いた。検査はできる限り、一緒に行った。セカンドオピニオンも紹介された。そこの医師は、
「このクリニックは、入院はできませんが、手術でがんを取ることはできます。抗がん剤の治療も通院でできます。奥さんの病状を見るとがんは日増しに大きくなっていると思いますので、できるだけ早めに手術することをお勧めします。ここであれば、すぐにでも手術することは可能です」
と言った。通っていた病院の治療方法と違っていた。がんを切り取らずに一日一日を過ごすことが、死に一歩ずつ近づいていることを実感した。
私は、娘の中学受験も重要だが、がんを一時でも早く取り除きたかった。一分一秒がとても長く感じられた。私たちはどちらの治療方法が良いのか、判断しかねていた。
知人の紹介で、保険の利かない医療を行っているマンションの一室にも行ってみた。そこで治療を行っている女性スタッフの方に、
「妻が乳がんのステージⅢの末期と診断されまして」と言うと、
「がんを患った方で余命宣告を受けた方は多数いらっしゃいます。医者から見放された方にリンパのマッサージを行い、克服できた方も数名いらっしゃいます。私たちスタッフを信頼して、通ってみませんか?」
と言ってくれた。私たちはその言葉を信じ、往復四時間かけ週に二回ペースで通った。