冬の訪れと卒業式

闘病生活が始まった。

お笑いは免疫力向上になり、がん細胞を死滅させることができるとネットに書き込みがあったのを見た。

私はそれからというもの、笑いの話をネットで検索し、一日一個選んで千恵の携帯メールに送ることにした。

お笑いの話は多数あり、そこからどれか一つ面白いと思うものを探すのは時間がかかったが、少しでもがんの進行を抑えることができればと願っていた。

笑い話のコメントがメールの返信で返ってくる。

「全然、面白くないんだけど、これのどこが笑い話なの?」私は、むっとして、

「面白くない話でも、笑っていた方が免疫力は向上するんだよ、知ってる?」

と返した。たまに面白い話を送った時は、夕食時など家族三人が顔を合わせている時に、

「ねぇ、パパ、あの面白い話をして!」

とせがまれる。しぶしぶと面白い話をし始めていると、

「少し、内容が違うんじゃない?」

と問い詰められる。長文を全て頭に記憶させているわけではないので、少しは間違える。また、正確に内容を話していても話し方によって、面白い話が面白くもなく聞こえる。それでも、家族の会話が生まれ、和やかな雰囲気で食事ができることに満足していた。

娘が塾に行っている時などは、レンタルDVDで笑える映画をよく借りて観たりしたが、面白かったというものはなかった。それでも良かった。千恵に寄り添ってあげることが大切だった。