「出術の日をできるだけ早めにしていただけませんか?」と尋ねたところ、
「手術ができる日程ですが、一月下旬と三月上旬のどちらかになります。その日以外は、他の患者さんの手術で埋まっています」
「他の病院で治療をするのであれば、紹介状を書きます。検査結果は持ちだせないので、また一から検査することになりますが……」
半分、脅しのようにも聞こえた。手術を早めるため、また同じような検査をすることはしたくなかった。有名な芸能人や政治家の方は、がんと診断されたら、すぐにでも手術してもらえると聞いたことがある。知人から、
「病院の偉い人と繋がりがあれば、早めに手術してもらえると思うけど、知っている人はいないの?」
と聞かれた。私は、首を横に振っただけだった。私に権力や地位があれば、早めに手術をしてあげられたかもしれないのに!と自分の無力さを感じていた。
一月下旬の手術では、受験期間中、千恵は不在となる。娘が安心して試験を受けることができるよう手術の日程は三月上旬に決めた。
受験後の空いている日は、そこしかなかった。あと三カ月後である。
【前回の記事を読む】十二月のある休日、「神様、千恵を助けてあげてください!」有名な厄除け神社で何度も小さな声で叫んだ
次回更新は8月16日(金)、16時の予定です。