六 愛の物語の舞台・ヴェローナ、イタリアファッションの最先端・ミラノ
夢のような一日が過ぎると、イタリア旅行ももう最終盤なのだという実感が湧いてきた。私たち一行はいつの間にかすっかり北部まで来ており、最終目的地ミラノももうすぐというところまで来ていた。
この日は午前中ヴェローナを観光し、午後はミラノという旅程だった。ヴェローナは石造りの建物が多い点ではローマと通底しているなと思ったが、街全体はこぢんまりと、だが愛らしくまとまっており、地方暮らしだった私はどことなく親近感を覚えた。
この地を有名にしたのは、言わずと知れた不朽の愛の名作『ロミオとジュリエット』だ(イタリア語的にはジュリエットはジュリエッタと発音した方が良いのだが)。ツアー一行はジュリエットの家にも寄り、ジュリエットが「どうしてあなたはロミオなの」と謳ったバルコニーを眺めたり、願いが叶うと言われているジュリエットの石像に触れたりもした(恐らくこの行為は「この世で唯一警察に逮捕されない痴漢」であろう)。
ジュリエットの家にはもう一つ、世界中で作られた映画のポスターのスクラップが所狭しと貼ってあったが、私はその中の一つに釘付けになった。日本で製作されたアニメのようで、赤く長い髪をしたジュリエットと青い髪をしたロミオがそれぞれ横向きに別方向を向いているポスターだった。
そのポスターのことは頭の片隅に置いておくことにし、私はヴェローナで解決しようと心に決めていたある疑問と対峙することにした。
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次回更新は8月19日(月)、11時の予定です。