しかし、資金面で不安がありましたので、外村さんに相談したところ、大丈夫です、融資は受けられます、とのことでしたのでこの計画が始まったのですよ。

彼が自分1人だけの考えで、融資の可否を言える訳がないでしょう。しかも、外村さんは、まだ御行に籍のある方ですよ。当然、支店とも打合せがあった筈です。その証拠に給与の3分の2は御行から出ているのですよ。その方が融資は可能だと言われたのですよ。

そして、事業計画の通りの設備資金が出されました。今になって運転資金は出せないでは梯子を外されたのも同然ですよ。信用、責任を旨とされる銀行のなさることですか。

6行協調融資の提案をされたのも外村さんですよ。私どもとは、取引のない都市銀行を5行の中に加えましょう、と紹介して来たのも御行ですよ。だから事業計画通り設備資金は実行されたのです」

「しかし、社長さん、その事業計画を決定したのは社長自身だった筈です」

「そうです。私です。今、支店長さんあなたは、私が自分に責任がないなどと言おうとしていると思っているのですか。私はそんなことをここで言おうとしているのではないのですよ。この事業計画を承認し、他の銀行に働きかけたのは、他ならぬ御行でしょうが。ここで責任の所在など話してみても何にもなりません。

私どもの知らない協調融資という方法を持ち出してきたのは外村さん自身だった、ということを言いたいのです。外村さん自身が勝手に決められることではないでしょう。当然、支店長さん、或いは本部と相談があった筈です。もう一度、本部と協議してもらえませんか」

松葉は、そうお願いして帰社した。

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次回更新は8月15日(木)、8時の予定です。

 

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