関東工場の運転資金の融資撤回

鹿児島第一銀行の都城支店に出向いた松葉に向かって、支店長がいきなり言った。

「社長さん、困りました。関東工場の運転資金について、本部が見直しを言ってきております」

松葉は、びっくりして自分の耳を疑った。

「それはどういうことですか」      

「今後の運転資金の融資は見合わせるようにとのことです。私どもも困惑しています」

「見合わせるとはどういうことですか」

「融資はできない、と言ってきました」

「それはどういうことですか。このプロジェクトは御行の融資の決定があったから始まったことですよ。それを今になってできないとはどういうことですか。もう既にこの事業は始まっているのですよ。それを今更出せないなどと、よく言えたものですね」

「本部がそう言っている以上、私どもではどうすることもできません」

「支店長さん! そもそもこのプロジェクトは御行の主導で協調融資が6行で組まれ、始まったことですよ。他にそんなことを言っている銀行はどこもありませんよ」

「他の銀行がどう思っているか、どう考えているか、私どもには分かりません」

「支店長さん! 何を言っておられるのですか。他の銀行が何をどう考えているか、なんて言っているのではないのですよ。御行が主導して始まったプロジェクトを御行で勝手に閉じるようなことができるのですか、と聞いているのですよ。そもそもこのプロジェクトの事業計画は、御行から出向してきた外村さんが作成されたのですよ」

「外村さんは、ただ単に事業計画書を作られただけでしょう。外村さんは単なる作成者であって、融資申込をされたのは、社長さんご自身の筈です」

「そうです、私です。よいですか、私は、今ここで形式的なことを言っているのではないですよ。私は、スリランカの工場を立ち上げて間もなかったのですが、関東に工場と倉庫を持つことによって相乗効果が得られると思って、関東に工場を造る青写真を描いてみました。