第1章:糖尿病の病態・疫学

3. 日本人はインスリン分泌能力が低い

A: ということは、欧米人は日本人より糖質を食べる量が多いからインスリンの作用でどんどん太っていくってことかな……。あれっ? でも、「糖質を食べる→インスリンが出る→太る」という流れは欧米人も日本人も同じですよね。それならば、日本人も糖質をたくさん食べ続ければ超高度肥満症になるはずですね……。ん~分からなくなってきました(涙)。

M: ヒトの体の基本的な仕組みは同じなので、「糖質を食べる→インスリンが出る→太る」という流れは同じですが、欧米人と日本人にはある能力に決定的な違いがあります。

A: ある能力の違い……、たくさん食べる能力かな……? 

M: ん~それも一理ありそうですが、ここでの答えは「インスリン分泌能力」です。実は、日本人のインスリン分泌能力は、欧米人の半分程度しかないといわれています。そのため、日本人も糖質をたくさん食べ続けると太ってはいくのですが、超高度肥満症になる前にインスリン分泌能力が低下して糖尿病を発症してしまうんです。

A: インスリン分泌能力が低いために、体質的に200kgまで太れないということですね! 

M: さすがあきさん、そのとおりです!  インスリン分泌能力が欧米人より低いのはアジア人全般に見られる特徴です。農耕民族だったアジア人は天候の影響を受けて飢饉になりやすかったためインスリン分泌能力が低いなど、諸説あるようです。

A: 確かに、韓国や中国の人も、ぽっちゃりの人は見かけても高度肥満の人はあまり見かけない気がします。アジア人はインスリン分泌能力が低いということは、糖尿病を発症しやすいということですか? 

M: お~っ、あきさん今日は冴えてますね!! おっしゃるとおり、日本人を含むアジア人は欧米人より糖尿病を発症しやすいんです。私たち日本人は糖尿病になりやすいという事実を知っておくこと、そして学校教育などを通じて、できるだけ早い段階から食事や運動への意識を高めることが糖尿病予防のために極めて重要です。

A: みなみ先生はどんなに忙しくても学校からの講演依頼は積極的に引き受けていますが、子供の頃から予防の知識を持つことが大切という思いからだったのですね!