「く、く、車椅子に乗れるようになったのですか? よかった。本当によかったです」

そう語る彼の目には光るものがあった。絞り出すように語った彼の言葉が嬉しくて、嬉しくて。看護師たちは入院患者の部屋をブロックごとに担当しては交代していくルール。

彼が前回担当したのは2週間ほど前。最も苦しい局面に、新入社員の彼は上司の指導を受けつつ、懸命に助けて下さった。自傷患者かつ重症患者の妻に、彼は自分の愛犬の話をして精神的にも癒して下さった。私は慌てて立ち上がり、頭を深く下げて感謝を申し上げた。

それから間もなくして、話を聞きつけた他のベテラン看護師たちも、祝意を伝えに来て下さった。中にはハイタッチで妻を祝って下さる方もいた。あってはいけない自傷行為。しかし、分け隔てなく、自分のことのように明るく復活を祝って下さる皆さんに頭が下がった。

改めて彼らに生かされていることに感謝した。窓から見える外の景色は木枯らしが吹き荒れていた。しかし、この空間だけは、人の優しさで満ち溢れ、陽だまりのような温かさを感じた。

■2021年11月28日

介添者として必要な昼間の所要時間を列記してみた。

・身体を拭き着替える時間=1時間×1回=1時間

・食事の準備と食事を与える時間(準備と後片付け含む)=1時間×3回=3時間

・投薬時間=10分×6回=1時間

・リハビリ準備とリハビリ時間=1時間

・医師やカウンセリングの往診やMRIなど準備待機含む=2時間

・尿管袋の残量管理や血栓防止機の異常監視、心拍数管理など管理時間=1時間

健常者であれば数秒か数分で終わる作業が毎日最低9時間以上かかる。その他洗濯作業や夜間の介添えも加わる。社会一般で介護される方のご苦労を学びつつ、関係される方におかれては肩や手首、腰や目等を痛めないで頂きたいと願った。

【前回の記事を読む】二度と立てないかもと諦めていた妻が…「立ったよ! 奇跡だ! 凄いよ!!」と叫び、下を向き泣いたリハビリ医師

次回更新は7月23日(火)、16時の予定です。

 

【イチオシ記事】「気がつくべきだった」アプリで知り合った男を信じた結果…

【注目記事】四十歳を過ぎてもマイホームも持たない団地妻になっているとは思わなかった…想像していたのは左ハンドルの高級車に乗って名門小学校に子供を送り迎えしている自分だった