【第三章】

5 血栓との闘い

■2021年11月16日

脊髄の医師から、座る訓練のためオーダーメイドのコルセットの作成が必要との説明を受けた。胸囲や身長を計測。自動車のシートのように頑丈な妻を守るコルセットは、月曜日に完成するらしい。

平衡感覚も失っているため、感覚と筋肉を取り戻すまでは、起きる時、座る時はいつもコルセットが必要。更に筋トレを続け、来週から起き上がる訓練を開始する。痛みもがく現時点を考えると想像しにくい世界だが、妻には痛みの世界だけではなく、未来に向けた次の扉を開かせてあげたい。

明日はふくらはぎの中に血栓が存在していないか、エコー検査を実施する。ふくらはぎ内に血栓が少しでもある場合は、一時、血液改善に時間を要すため、リハビリは中止せざるを得ない。血栓がなければ予定通りリハビリは続行する。

以前学んだが、万が一、血栓があって心臓に飛ぶようなことがあれば致命傷になる。夜、私は暗い廊下に出て月を見上げた。「私の命と引き換えに妻を助けてほしい」と丸い月に何度も祈った。

腰椎の問題が最優先ながら、整形外科的な課題に対する道筋が立ち次第、目が見えない妻には眼科を受診させたい。しかし、車椅子に乗れないと眼科での受診もできない。

次に心臓周囲が苦しい時があるため、心臓の検査に入りたい。早く全ての検査を受けさせてあげたい。課題は絶対にクリアさせてあげる。妻のたった一つの願い「お家に帰りたい」を絶対に叶えてあげたい。

■2021年11月17日

ガスだまりで荒れた大腸も、定期的に病院食で出して頂けるヨーグルトと整腸剤のお陰で流れが安定化してきた。介添えさえすれば、ベッドで寝たきりでも用を足すことが可能になってきた。