病棟が機能するまで一時間ほどの間トランプで一人遊びをする。
やがて看護婦さんが見え、様子を聞かれる。夜中も何度も来てくださったので状況は分かっておられたが。本人は熟睡中である。
入院から三日目、皮膚科の婦長さんが謝りに来られる。泊まるとの申し出を断ったうえでの転落事故で本当に申し訳ないと言われる。当直の看護婦さんも見え、土下座されんばかりに謝られる。
病院側にしてもこんな患者を受け入れたばっかりにとんだ災難に遭ったわけで、お互い不運だったとしか思いようがない。
しかし、そのように謝られたことで、胸のつかえが下りたことは確かだ。
点滴、ヘルペスの手当て、清拭、下の洗浄消毒等が担当の看護婦さんを中心に行われる。
点滴の時は一時も目が離せない。手を勝手に動かすばかりでなく針を抜きにかかるからだ。片手はしっかり握っていなければならない。尿管も引っ張るので用心が必要だ。
一時もじっとしていない手には、最後まで悩まされることになるが。午後三時の面会時間には親戚の者が二人来る。さすが商売人の姑、他人に対しては礼儀を心得ている。ちゃんと礼を言ったり合槌をうったりして、そばで聞いているととても同一人物とは思えない。
夜はまた動き回って寝ず、夜明けと共に眠る。私は姑を看ながらテレビを見たり本を読んだり日記を書いたりして夜を明かす。まる二晩徹夜だ。姑の高鼾を聞いていると無性に腹が立ち、眠気すら感じない。いつまでもつだろうか。
四日目に皮膚科の部長先生が様子を見に来られる。申し訳なかったと詫びられ、一月分の部屋代の支払い免除を申請した、これくらいしかさせてもらえないが勘弁してくださいと言われる。ありがたくお受けすることにする。
朝から明日の手術に備え二十四時間点滴となる。採血や血圧測定、浣腸も数回に及び忙しい一日だった。
点滴が夜通しあるため、付き添いが一人では無理なので娘と二人で付く。
私は二晩寝ていないし今後のため娘に頼み別室で朝四時頃まで寝させてもらう。病室に戻って聞くところによると、娘がちょっと油断した隙に点滴を抜きそこらじゅう血だらけになり、看護婦さんと三人で着替えさせたりシーツや布団を替えたり大変だったらしい。針も飛んでいたそうだ。点滴は外してある。また朝から入れるとのことだった。娘を寝に帰らせる。
付き添い早々大変な目に遭わせた。本人はいつも通り白河夜船。私は四時間ほど睡眠を取ったおかげでまた一日持ちそうだ。今日の手術うまくいくだろうか。
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次回更新は7月16日(火)、20時の予定です。
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