「いえ、でも限りなく本物なんです。鯨の習性はそのまま持っています。外から見たら鯨そのもの。外から見た部分はすべて鯨と同じ人工細胞で出来ています。違うのは、中身。

推進力がとても強くて、寿命も長いんです。もともと鯨の天敵はいないようなものですけど、もしいても外敵に襲われて死んでしまうようなことはありません。半永久的な活動ができる人工鯨を作ったのです」

「一体どんな目的で?」

「人工鯨の頭脳はスーパーコンピューターで作られた人工知能です。人工知能は学習を行い、行動パターンは鯨のように賢くなります。それと、何より重要な情報のストレージ機能にもなっています。記憶装置のことです。

つまり人間よりも高性能に考えて、そして記憶することが出来ます。まぁ、これは本当は秘密の情報ですが、皆さんにはお話ししましょう」

そんな風に藤井奈々子さんは話した。

「日本の重要な記憶装置は、いつ地震や津波、火災や台風などの天災に襲われるか分かりません。戦争という可能性もあります。もはやどの土地に置かれてあっても、未来永劫危険の無い場所など無いのです。

そこで政府は考えました。日本の国土を離れた移動体。そこにスーパーバックアップを設けましょうと。その役目が人工シロナガスクジラです」

 

【前回の記事を読む】飛び跳ねた巨大鯨が飛ばしたボトルメール。中に入っていたのは鯨からの手紙!?

次回更新は7月31日(水)、11時の予定です。

 

【イチオシ記事】「気がつくべきだった」アプリで知り合った男を信じた結果…

【注目記事】四十歳を過ぎてもマイホームも持たない団地妻になっているとは思わなかった…想像していたのは左ハンドルの高級車に乗って名門小学校に子供を送り迎えしている自分だった