第二章
施設に私が先に行っておばあちゃんと待つことになった。
おばあちゃんと私に会わせる前に、藤井奈々子さんという女性にはお父さんとお母さんが先に会う。でも、おばあちゃんにはそれは言わないんだって。
予定の会合までまだ時間があったけど、お父さんたちがやって来た。
「杏南、待たせたな。お母さんもお待たせしました」
お父さんの後から、お母さんと見ず知らずの女性が一人ついてきた。
「こんにちは。橋本文代さんと石崎杏南さん?」
「はい」
私は小さく元気に返事をした。
「はじめまして。お会いできて光栄です」
そう言うとその人はおばあちゃんの方に向いて深々とお辞儀をした。
「さあ、じゃあ、談話室借りてたわね。行きましょう」
お母さんがそう言うってことは、前もっての話し合いはうまく収まったのかな。談話室というのはこの施設にある会議などの用途に使う場所らしい。家族と相談しなければならない場合も多分たくさんあるのだろうから、こういう部屋があってもおかしくはない。
でも思ったよりも整っていて温かみがある。板で出来た会議用の長テーブルがあるだけだと思っていたらそうじゃなくて、ちゃんとゆったり座れるソファが対面して、温泉旅館にでもありそうな立派なテーブルが置かれていた。