はじめに

私が50代半ばの頃「人の命は3万日」と、ある僧侶の説法で聞きました。長い間、心の奥にあった3万日が、70歳になった時にフワッと心にクローズアップされました。

今の人生は有限だということを改めて感じた時、私にはやり残したことがたくさんあるような焦燥感に襲われました。「何かしなくては」、「私は今何をしたいのか」、「私の生きた証しは」、はたまた「何を残せるのか?」。色んな思いが心に渦巻きました。

迷い苦しんだ20代。原因不明の白血球減少の病に襲われ死の恐怖さえ感じて、一日一日が大切で、生きていられるだけで幸せと感じた30代。天職かもしれないと感じるほどの仕事に出会えた40代。子供達の巣立ちやウツ、体調不良で悩んだ更年期……。

本当に色んなことがあったけれど、多くの人との出会いは、私の人生にかけがえのないものとなっています。出会った人達の全てが学びであり、今の私という人間が作られてきたのだと思います。

この心の奥にしまわれていた思いを、言葉にして、そして文章にして、42編のエッセイと詩にして纏めました。

迷い道にいる人に、少しの勇気を。

悲しみの中にいる人には、少しの希望を。

幸せな人には、もっと幸せを。

少々ドジで、どこか弱いくせに、強く逞しい私。涙もろくて人に甘くて何度も痛い目に遭いクヨクヨするが、又すぐに立ち直る私。

甘さと優しさはいつも同居して隣り合わせにいる。そんな私の半生を綴った『夢の小箱をアナタに』です。