開き直りの貧乏人(平成十一年~現在まで)

自由行路

あるとき、戻れる家があるなら二、三年ぐらいホームレスを体験してみようと思ったことがある。ゴミ箱に捨てた弁当を拾って食べ、夜は野宿紛いで寝る。生きることのほんとうの意味が知りたいと思った。

世の中こんな変わり者がいても、よいのではないか。ホームレスから作家になった人もいるのだから、転んでもただでは起きないという心意気だ。

しかし勇気が足りなかった。貧乏について書いた本はあるが、貧乏人について書いた本は知らない。

道内一周の道の駅スタンプラリーも二回行った。貧乏人の車中泊、旅の最適なものと思う。貧乏人も、千二百CCのドイツ車に四年間ほど乗った。

人生は一回限りだから、一度外車に乗ってみようと思い、持ち金を集めてやっと入手して、二回目のスタンプラリーに出かけた。

みんなに「何が貧乏人だっ」と言われた。七十七歳が九十八キロ出して行政処分、自分ながら参った。友は精神鑑定が必要ではと言う。

介護される身になったら、などと先のことを心配したら歳を取るだけなので、気楽に行きたい。貧乏人が大見栄を張ると、そのシワ寄せがジワジワ寄せてくるから、車は軽自動車に替えた。

いい年して、いい振りをして、家も土地も無くした。自分一代で終わりだから、今は、市民の皆さんの税金で建てた家にお世話になっている次第である。