「そうだったのか」毘沙門天は、あの祠の中に宝物の光の剣があることを確信した。

「英良様……」

「どうした毘沙門天殿……」

「ついに見つけたので御座います。光の剣を……」

「どこにあった毘沙門天殿?」

「それが、冥府の奥底に御座います。小さな祠の中にあるかと。然し英良様……その祠の周囲には餓鬼どもが集っております」

「行くか毘沙門天殿?」

「御意。英良様のお力を頂けますか?」英良は頷く。

「光力千陣羅生門(こうりきせんじんらしょうもん)。この力を下さらぬか英良様……」

毘沙門天はあまり刻をかけたくなかった。この騒ぎを嗅ぎつけさらに多くの餓鬼や魑魅魍魎が集まってくる。毘沙門天はそれを避けたかった。

「分かった毘沙門天殿……光力千陣羅生門の力を放とう」

英良が光力千陣羅生門を詠唱した瞬間、光力千陣羅生門の光陣が即羅生門に流れ込んだ。羅生門は金色に煌めきその光で祠を取り囲んでいた小さな餓鬼は一瞬にして消滅した。

毘沙門天は餓鬼の群に割って入り、祠の入り口へと走った。餓鬼どもは慌てふためき、毘沙門天と対峙するどころか逃げまどう。

「どけどけ餓鬼ども」羅生門を縦横に振りかざし、密集して動けない餓鬼を斬り捨て毘沙門天は進み、祠の前まで来たが祠の入り口の扉の前に二体の餓鬼が毘沙門天の進入を許さじと立ちはだかった。

しかし、その抵抗も毘沙門天の敵ではなかった。疾風の如き羅生門の動きでその二体の餓鬼の首は闇の中へ刎ねられていった。

周囲を見渡し、襲撃してくる闇の動きはないと判断した毘沙門天は祠の扉をこじ開け、細心の注意を払いながら中へと入ると室の中ほどには四尺ほどの箱が紐で結ばれており、十字のような文様が書かれていた。毘沙門天は紐を解き、箱を丁寧に開けた。

「おおっ!」毘沙門天は低く呻(うめ)いた。毘沙門天が目にした剣は、紛れもなく光の宝刀だった。

「やりましたぞ……英良様」毘沙門天は光の宝刀を背負い祠を後にした。
毘沙門天は人界へと急いだ。途中に小さい闇……餓鬼の群や騒ぎながら襲ってくる魑魅魍魎の塊はあったが、毘沙門天はかわしながら前へと進み続けた。
 

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