邂逅

およそ二刻……それは人間の世界では二時間くらい進んでもう少しで冥府を出ようかとした時のことだった。遠くから見ても分かるほどの悪意の塊が毘沙門天の行く手を塞いでいた。それは荻野一族と呼ばれる一団だった。

「ぬぅぅ……」毘沙門天は短く呻いた。

「英良様」

「どうした毘沙門天殿……?」

「我の前に立ちはだかるは、荻野一族……かつては我等と同じ仏界にいた者。しかし欲に溺れ闇の世界へと堕ちていった者に御座います。何故、今ここに現れたのか!  我の行く手を阻むのか……? とにかくこの場を速く抜け出さないと後から冥府の追っ手がくることは必至に御座います。英良様。光力千陣羅生門この力を我に!」

英良は光力千陣羅生門の力を毘沙門天へと放つ。光陣が流れ込んだ羅生門は銀色に煌めき、毘沙門天は前方の荻野一族の隊列へと進んでいった。整然と隊列が組まれていたが、毘沙門天が前列を切り崩し奥へと進むにつれて隊列は機能を失ってきた。

毘沙門天が敵陣の中央まで辿り着いた時には、既に総崩れとなり斬り捨てられた者の中に敵意の総大将がいたのだろう。主を取り巻いていた歩兵達は全て退散し、残されたのは毘沙門天に斬られた亡骸のみだった。