「誇龍(こりゅう)、誇龍」と英良は詠唱する。

「英良様。有難きお力に御座います。神龍が光陣を受け大きく金色の光を放っております。これなら負けはしないかと……さらに誇龍のお力を神龍に、英良様……」

黒い闇の霞が神龍を覆ってきたが、神龍は口から金色の光を闇の中へ射し込み突き進んだ。円を描きながら、上へ昇り闇の力を分散する。怒羅権は力が甚大だった。闇の力は天から闇の幕を下ろし広目天と神龍もろとも一網打尽にしようとする。しかし、誇龍の力はそれを遙かに凌いだ……。「誇龍、誇龍、誇龍」英良は力を放ち続けた。

神龍は大きさは変わらないが、英良からの力により光陣を帯び一回り大きく見える。動きも機敏になり、怒羅権の闇を払いつつある。

「英良様。お力をお納め下さい。怒羅権はこれ以上抵抗はできないでしょう。神龍の力……英良様の力が勝りましたな……」

二体の悪魔の姿が崩れ、闇の塊へと同化した。怒羅権の力が消滅しつつあった……。

「もう良いか広目天殿……?」

「御意。我等はここを通り抜けます英良様。有難きお力に御座いました」

「何か起きたらまた言葉をくれ広目天殿……!」

「御意。有難き御言葉に御座います英良様」

闇を一掃した広目天は神龍と共に光が届く隙のない冥府の奥深くへと進む。闇の群れは動く気配はなかった。広目天が進む遥か前方に目を向けると何か奇妙なものの気配を感じた。光を微塵も感じない冥府の奥深くで確かに光を感じる。

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