家のことや姑のことなどもあけすけに話すので楽しかった。仕事もだんだんに慣れ、ここには長くいられるかもと思えるようになった。
ある日のこと、友希恵さんが今日は早く帰らなくっちゃ、とうきうきしているので、「どこかへ行くの?」と聞くと水道橋にある野球場へ行くという。野球観戦かと思ったら、何とマサキのコンサートの音漏れを聴きに行くという。
チケットはなかなか取れないので、音を外から聴くのだそうだ。会場の外で音漏れを聴くなんて初めて聞いたので驚いた。
「へぇー、今度一緒に連れていってよ」と思わず言ってしまった。
「あなたもマサキのファンなのね? じゃあ一緒にコンサートを申し込みましょうよ」と言われた。
よく聞くと、コンサートに行くにはまずファンクラブに入らなくてはならないらしい。そういう世界もあるのかと、初めて知ったのであった。
しずかはそれからまもなく生まれて初めてファンクラブというものに入会したのだった。夫や子どもには内緒だった。
若いころには音楽といえば、ユー〇ンや山〇達郎を聴いていたぐらいで、コンサートというものには親と行くクラシックの音楽会以外は行ったことがなかった。
友人の車の中でみたコンサートのDVDも買ってみた。何度も何度も繰り返し観て、歌詞もほとんど覚えてしまった。聴けば聴くほど、前向きな歌詞が多く、元気をもらえた。
【前回の記事を読む】ある日仕事帰りに夫が倒れて救急車で運ばれたと勤務する銀行から電話が!吐きそうになるのをこらえながら…
次回更新は6月22日(土)、21時の予定です。