しかし、しずかの夫は食に興味がない。たまに美味しいものを出しても無反応。なんならコンビニ弁当でもカップ麺でも十分だというタイプなのでつまらない。

久しぶりに時間ができたので、近所のママ友と集まることになった。団地のママたちは、おしゃれなお店でランチをしたりはしない。団地内の集会所を予約して、手作り料理を持ち寄り集まるのである。

近所の幼稚園はすべからく親の手作りを推奨している。お道具箱や手提げや上履き入れなども全部母親の手作りでなくてはいけなかった。そういう幼稚園を選ぶ母たちは、おしなべて料理も得意だった。

公園で遊ぶときもさっと手作りクッキーやチーズケーキを持ってきたりする人たちだったので、彼女たちのおかげでしずかもいろいろと簡単なレシピを覚えることができた。

集会所のテーブルの上にはすでに人参サラダや、春巻きや、手まり寿司にパウンドケーキなどが並んでいてペットボトルのお茶で乾杯した。

子どもたちの話になると、気が置けない仲間たちとのおしゃべりは尽きない。職場の人たちとも学生時代の友達とも違って楽しかった。

これ、美味しいねぇ、どうやって作るの? なんて聞きながらレシピをメモ。またレパートリーが増えて嬉しいけれど、家族は喜んでくれるだろうか。

【前回の記事を読む】同級生のほとんどが腰かけで有名企業に就職し数年で寿退社。新築祝いを贈るばかりで自分に返ってくる見込みもなく…

次回更新は6月19日(水)、21時の予定です。

 

【イチオシ記事】我が子を虐待してしまった母親の悲痛な境遇。看護学生が助産師を志した理由とは

【注目記事】あの日、同じように妻を抱きしめていたのなら…。泣いている義姉をソファーに横たえ、そして…