お嬢様の崩壊

冬になると授業中には教室のうしろに毛皮のコートが山のように積まれて、その光景は壮観だった。この教室だけでいったい何十匹の動物のなれの果てがあるのかしらと怖くなったものだった。そういう自分も海外で買ったムートンのコートを着て学校に通っていた。

友人の中には当時流行っていた女子大生向けのファッション誌にいわゆる読者モデルとして表紙を飾っている人もいた。

授業が終わると正門には高級外車がずらりと並び有名大学の男子学生たちが彼女を迎えにやって来る。そして六本木や西麻布へデートに繰り出すのである。

大学の横にある民間の駐車場は学生たちの多くが個人で契約しており、マイカー通学をしていた。そこには真っ赤なスポーツカーなどの親に買ってもらった可愛い外車がたくさん並んでいた。しずかも週末のテニス部の活動のときには父親の車を借りて通学していた。

卒業後は、同級生のほとんどが腰かけで商社や有名企業に就職したが数年で寿退社。結婚した相手は収入が良く実家もお金持ちで目黒区や世田谷区といった都内の閑静な住宅街に一軒家を構えて優雅な奥様というポジションを手に入れていた。

普段はテニスをしたり、お稽古事に励んだり、楽しそうな毎日のように見える。新居に招いては手料理でおもてなしをしてくれる。