第二章
一年一組
部屋に着いて行沢がドアを開けると麗奈を座らせ、その向かいに行沢と並んでパイプ椅子に着いた。藤堂は呆然気味の麗奈に質問を投げかけていた。
「初っ端から失礼ですが、ご主人とは同居なさっているんですか」
「ええ、そうです。なぜ朝から家にいなかったかとおっしゃりたいんですよね。今日は夜勤明けで帰ってきたところでした」
「夜勤。それは大変だ。失礼ですがお仕事は?」
「看護師です。近所の介護施設です」
「看護師さんで。まあご苦労さんです。後ほど、そちらの連絡先も教えていただけますか」
「はい」
「今日はお仕事が終わってすぐにご帰宅に?」
「いいえ。車の中でいったん眠っていました。今日は急遽、対応しないといけないことがあったので、仮眠が取れなかったんです。車に乗ると、眠気が襲ってきたので一時間ほど眠っていました」
「そうですよね。気が抜けないですよね。夜勤なんて。ほとんど職員さんもいないから、大変だ。心もとないでしょう。ところで仮眠のため車を停車させているのはどちらですか」
「職場の駐車場です」
「なるほど、ちなみにそれを証明する手段はありますかね」
「いえ、だってこんなことになるとは思っていませんでしたから。こんなことになるなら早く帰ればよかった」と再び泣き崩れる。
彼女のアリバイは防犯カメラを見れば分かるかもしれない。
「ちなみに職場まで車でどれくらいなんですか」
「五分くらいです」
「ずいぶん近くなんですね。いつも車を使っているんですか」
「ええ、夫はバスで仕事に行っていますし、それに私も車の運転の練習がしたかったので。仕事終わりに買い出しをするのに便利なんです」
「なるほど」