二人は笑ってそれぞれのワインを口にする。
「課長、刑事課に命令を無視したりする人いるんですか?」
「ああ、いるよ。沢山いる。君もわかっているだろうけど、うちは組織だ。組織にとって指揮命令系統は命だ。それを守れない者はもはや警官ではない」
「そうですね。それは良くないですよ」
「だから私はそういう者を排除し今以上に強い組織にしたい。我々の敵は今や組織力で犯行を繰り返す強敵だ。我々もこの組織力を武器にして対抗しないとならない」
「はい」
「その為に君が必要なんだ。協力してくれるね?」
「もちろんです。課長の気持ち、よくわかりました。だからあたしは課長と一緒に刑事課を変えていきます!」
有田は三杯目のワインを飲み干し、佐伯に向かって敬礼したが、その目はトロンとして体はゆらゆらと揺れている。酩酊を通り越して泥酔状態に近い状態だ。そろそろお開きにするか。
「そろそろいい時間だな。有田君もかなり酔ってきているようだから帰るか?」
「あたしまだ全然大丈夫ですけど? でも課長が帰れって言うのならそうしますよ」
「とりあえず会計を済ませてくるから、ここで座って待ってて。水でも飲んで」
佐伯は有田に水を飲ませた。
「課長! ご馳走様です!」
有田はフラフラしながら立ち上がって敬礼した。
「ほら、いいから座って」
佐伯は素早く会計を済まし、有田を抱え込んで店を出た。