動物と暮らせるマンション
「ワンニャン教室の使用料もマンションの家賃も良心的というより、他と比べたらうんと格安なの。部屋は大事に使ってください、粗相があったら、すぐに知らせてください、補修します。
一部負担をお願いするかもしれませんが、保険に入って頂くので、大事でなければ保険で大丈夫だと思います、なんて手紙みたいな文が契約書にはいろいろ書かれている。
だけど、敷金・礼金もないの。一年に一回、定期メンテナンスで室内は見られるけど、むしろこっちの相談に乗ってくれるの。
家具を買おうと思うんだけどって言ったら、こうしたらどうですかって、クローゼットの中を工夫するアイデアなんて提案もしてくれるの。頼めば特別料金でやってくれるの。
もともと棚も備え付けが多くあって、クローゼットも広いの。部屋は広く使ってくださいって定期検査に来る人が言うの。全室床暖房もついてるのよ。それにね、ここのマンションは不動産会社を介していないの。
大家さんに直接申し込むの。どのくらいの所得があるとかじゃなくて、家賃を持続的に払えれば構いませんとか、申し込み書に書かれている。保証人も不要なの。ちょっと多い質問に答えて、大家さんにオーケーもらったら、貸してもらえるの。
それにね、ペットを飼っている人のマンションなの。住人はみんな犬か猫とか、動物を飼ってる。ドッグランもタダで使えるの。
ホントに天国。だから、転勤とか、よっぽどのことがなければ、みんな出ていこうとしない。みんな、ここを終の棲家にする気みたい、私もだけど。トラブルなんてないのよ。
時々、住人みんなでバーベキューもする。ちょっとした村ね。いま部屋は全部埋まっちゃってるけど、ネットに案内出てるわよ、ネットで〝ペットと暮らすメグ・マンション〟で引いてみれば」って恵美さんが説明してくれた。
初めての子は洗ってくれる
「まだ後がいっぱいあるの」って、カナは続ける。
「中がまたすごいの。診察室にはコンピュータとかモニターがいっぱい。診察室は三つもあって、もう一人の先生も別室で診察してた。こっちに目で挨拶してくれる。ガラスで仕切った向こう側には凄い手術設備があるの。
レントゲン室、CTスキャンとか透析室なんてのもある。それから入院患者の子たちが入ってるクレートが綺麗に並ぶガラス張りの病室も見える。そこにいる人たちみんな、目が合うと手を振ってくれたり、微笑んでくれる。何故か、空気がいいの。
設計士の工夫で、見えないところに換気扇や、空気清浄機がついているんだって。まず、驚いたのは診察台が低いの。メグ先生、『犬、猫もいきなり、高いところに抱き上げられて座らされるの怖いからさ』って、ボタン押したら、ハルを乗せた診察台がゆっくり上がっていく。