ゴンとチャチャはコンシェルジュ

「そのバイトのミネちゃん、ていう子が言うの。『私ね、人見知りで人と話すのも苦手だったの。バイト先でもよく怒られて、高校の時から一カ月も続いたことなかったの。ここの面接の時に正直に言ったの。

そしたらメグ先生が、『ここで相手にするのは動物だよ。君は小さい時から犬猫飼ってたんだね。ベテランじゃないか。人と話さなくても、大丈夫。動物が好きならやってみないか』って。

それに、『困ったことあったら、俺でも誰にでも、スマホで連絡して。話しにくかったら、メールでもいいんだよ。メールの方が思いの丈を伝えられるかもしれないか』って、スマホにスタッフ全員の連絡網をパッケージにして入れてくれたの。それに、だれだれさんの誕生日です、一声かけてなんて、顔写真入りのメールが送られてくる。

来てから一カ月経って私の誕生日が来たら、会う人ごとにミネちゃん、おめでとうって言われて、今までそんなことなかったからとても嬉しかった。犬猫を介して人見知りも減ってきたの。私、トレーナーになりたい。卒業したらここで働きたい。F大から来ている子たちの中には、そんなこと思ってる子が多いんだよ』」って。

「ドッグランに戻ったら、『この子、良い子ね』ってトレーナーの恵美さんがハルと遊んでくれてた。いろいろ話してたら、そのうちアナウンスで呼ばれて一緒に待合室に戻ったの。待合室にもキャットウォークが壁一面にあって、飼い主さんの猫が天井まで行ってる。

シャーッて言い出したら、恵美さん、待合室でにわかトレーニング教室。猫も躾けるんだ、凄いよね。

それにね、待合室にメグ先生の愛犬チャチャと猫のゴンが入ってきてご挨拶するの。チャチャは伏せして私を見上げて、ゴンは足にスリスリしてくる。『この子たちはいわゆるコンシェルジュなの』って恵美さん」