第3章 室町幕府の崩壊
2.今堅田城攻略
二月二十四日<石山砦攻め:織田軍本陣>
光秀
「昨日はご苦労様でござった。石山砦は勇猛な柴田殿並びに丹羽殿、蜂屋殿のお力を戴き、お陰で見込み通り一日で攻略でき申した。上様のご下知もあり、石山砦は破却することにし、柴田殿の軍勢が残留して後の処理をして戴くことでよろしゅうござりましょうか」
勝家
「承知。まことにあっけなかったな。敵は正門が敗れたら、われ先にと搦め手から逃げ出しおった。正に公家の戦よ」
長秀
「誠に。わが部隊は無傷でござった」
光秀
「さて、今堅田城の征伐でござるが、ここは丹羽殿に上席をお願いしたい。またここは某の居城である坂本城から戦船(いくさぶね)を出し、某の鉄砲隊を乗せ、城の西岸から鉄砲で櫓を目掛けて打ち込めば、至近距離からの攻撃で敵は大混乱になると思われる。
そこを見計らい、待機していた丹羽殿、蜂屋殿の主力部隊に明智勢が合流し、大手門を突破して一気に攻めれば、敵は壊滅すると存ずるが、いかがでありましょうや。また城主の磯谷久次殿は、某が幕臣の頃、共に働いた盟友で戦も知らない文官でござる。
恐らく公方様の命令で、やむなくここに籠ったものと思われる。機を見て降伏を勧告すれば、すぐにも白旗を掲げると存ずる」
一同
「われらも明智殿の案に異存はござらん。いざ、参らん」
<本能寺>
信長
「光秀大儀。此度の戦、ようやった」
光秀
「ははっ、ありがたき御言葉、恐悦至極に存じ奉ります。戦況は書面にてお知らせした通りでありまするが、本日はその戦利品等持参致しました。目録をご覧戴きたく」
信長
「うむ。分かった、よくできておる。これで将軍義昭様も懲りてもはや儂にはかなわないと分かり、おとなしくなるであろう」
光秀
「ははっ、仰せの通りと存じます。そこで、改めてお願い申し上げます。この度の戦で、投降した今堅田城主磯谷久次の件でござりますが、何卒お命をお助けくださりますよう、重ねてお願い申し上げます」
信長
「磯谷は将軍家において有能な文官と聞き及んでおる。本来儂に逆らう敵ではない。なで斬りにすべきところだが、この度に限りそちの働きに免じて許して遣わす。そちの家臣として織田家に仕えるも良し、将軍家に戻ることも良し、許す」
⇒確かにこのような男は、今後の朝廷対策にも使えるし、何よりも朝廷に対し有用な者は生かして使うこともあるとの証ともなり、朝廷もほっとするであろう。いわば両得じゃ……。