第3章 室町幕府の崩壊

4.室町幕府の終焉

七月十六日<牧島城:将軍義昭本陣>

秀正

「公方様大変でござりまする。信長が七万もの軍勢で攻めて参りました。この城をびっしりとり囲んでおりまする」

義昭

「何を? もう来たのか! 早過ぎる。二条城は落ちたのか。まだ本願寺や武田との連絡が取れておらん。うーむ、しかし、この城は二条城と違って要塞堅固であるぞ。信玄が来るまで、持ちこたえよ!」

秀正

「公方様、見たことのない巨大な戦船が湖面を進んで参りました! ウアー、大砲を打ち込んできましたあ―!」

義昭

「何! 明智が予の城に鉄砲を打ち込んできたと! おのれ明智め、幕臣だった頃の恩を忘れたか! 何、藤孝や村重までが戦船にいるとな。うーむ、許すまじき仕儀じゃあ!」

秀正

「公方様、柴田勢に表門が破られました!」

七月十八日<大安宅船:信長本陣>

義昭

「わー! 城方の武士共は何をしているのじゃあ! あーっ、もう駄目じゃ……降参じゃあ!」

光秀

「上様、公方様がご嫡男を人質に差し出し、降参されました!」

信長

「何、もう降参だと! まだ何もしてないではないか……。呆れたご仁じゃ。この度は許さん。公方が何もできぬよう、都から追い出してしまわねばならぬ。その交渉だが、秀吉、将軍義昭のことは、光秀に代わってお主が対応せよ」

秀吉

「ははっ。して、如何ようにすればよろしいでしょうか。この際禍根を残さぬよう、思い切って……」

信長

「たわけ者めが。かつて、三好三兄弟が将軍義輝様を殺した例もある。現職の将軍を殺して天下の面目が立とうか」

秀吉

「ははっ、されば、将軍様ご自身に伺ってみまする」

光秀

⇒何、また秀吉にか……いやいや、これは幕臣であった某への、上様の思いやりに違いない……。